MINOTAKE LIFE

死ぬまで無事系サラリーマンの、身の丈に合った生活

『蔵書の苦しみ』岡崎武志

ともあれ、吉田健一は一貫して、蔵書を多く持たなかったようだ。ただ、その五百冊は、本当に必要な、血肉化した五百冊だった。(略)
「(略)一日に三冊もの本を読む人間を、世間では読書家というらしいが、本当のところをいえば、三度、四度と読み返すことができる本を、一冊でも多くもっているひとこそ、言葉の正しい意味での読書家である」
(略)
「自分の書棚には、時に応じて、自在にページをひるがえすことができる本が、五、六百冊もあれば十分、その内訳が少しずつ変わってゆくというのが、いわゆる完全な読書人なのである」