MINOTAKE LIFE

死ぬまで無事系サラリーマンの、身の丈に合った生活

満員電車に乗れなくなった日

 

 

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photo by Joshua Rappeneker

※人によっては蓋が開いてしまうかもしれないので、閲覧注意です。

きっかけは、少し早めに退社した雨の日の会社帰りのことだった。

いつものように中央線快速に乗って、いつものように車両の真ん中に立ち、網棚にカバンを乗せて、本を読んでいた。ずっとこの形で通勤をしていたのだ。
だがあと3駅ぐらいのところでなかなか発車しない。
新宿駅で線路に人が立ち入ったため運転見合わせとのアナウンス。
中央線ではよくあること。
やれやれ、まったく酔狂なことをする人がいるものだ、と村上春樹風のため息とともにじっと発車を待っていた。
この日はそこそこの大雨で、車内は蒸していた。そして停車時間が経つにつれ、徐々に車内は混雑してきた。
もっと蒸し暑くなる。
もっと混んできて身動きが出来なくなる。
なにやら長引いてるらしく、なかなか電車は発車しない。
焦れる。蒸し暑い。動けない。
こんなに混んだ電車では、降りたくなってもちょっと降りれないな。
俺一人が降りるために、たくさんの人がいったん降りなきゃいけない。
迷惑をかけてしまう
「すみません、降ります」
網棚からカバンを鷲掴み、人をかき分けてなんとか電車を降りた。
心臓はバクバク。別にトイレに行きたくはないし、喉も渇いてない。いまできることは、運行再開をじっと待つことだけ。
それがむつかしかった。
ホームのベンチに座っていると、止まったままの電車にはどんどん人が乗り込む。定刻なら4〜5分おきに電車が来る時間帯だ。ついに電車は朝ラッシュを凌駕する混み方になった。
何分経ったか、やっと運転が再開され、超満員の中央線は高尾へ向かって出発した。
そのあと来る電車来る電車、すべて超満員。
こんなの乗れるわけがない。
バスに乗って帰ろうとロータリーに出るが、多摩地区には横に走るバス路線がない。
電車に乗る以外、帰る手立てはない。
絶望感。
もう電車を降りて50分経った。
あのまま電車に乗っていたら、もうとっくに家でご飯を食べている。
今はただ、ホームのベンチで次々に来る電車をただやりすごしている。
なにをやってるんだ俺…
1時間半ほど経って、ようやく混雑が落ち着き、席に座ってやっとの思いで帰った。
でももう、満員電車には乗れない。
またあのパニックがきたら。
また電車が止まったら。
そう思うと、たとえ空いてる電車でももう怖かった。