MINOTAKE LIFE

死ぬまで無事系サラリーマンの、身の丈に合った生活

『天国までの百マイル』浅田次郎

バブル崩壊で会社も家族も失った城所安男(きどころやすお)は、心臓を患った母がもはや手の施しようがないことを医師から告げられる。

女手ひとつで四人の子供を育てあげた母をなんとか助けたい。その一心で兄姉に掛け合うが、生活を壊されたくない兄姉たちはみな消極的である。

金がない。家族ともうまくいかない。

そんな安男を包み込むのが、マリという女だ。彼女はこれまで何人もの“くすぶってるいい男"を癒やし、そしてその男たちはみなマリから離れていった。だから大丈夫、ヤッさんもきっとよくなる。ことあるごとにそう言い、安男の背中を押す。

千葉のサン・マルコ病院に、神の手をもつ医師がいると紹介される。この医師なら、母を救えるかもしれない。
その距離は百マイル。
安男は大きな賭けに出る。

家族の絆があれば幸せか。
金がなければ不幸か。

著者は間違いなく、金では手に入らないものがあると信じている。だが一方で、貧乏の辛さも知っている。
どっちも大事だよなあ。本を閉じて考えた。